真実を知りたいー4

エスタブの欺瞞が許せないので、頑張るしかないのです。

萎縮する公共空間?

iyahaya


 また朝日新聞の記事に対する批判です。6月12日のオピニオン&フォーラムは、政治学者、山本圭立命館大学教授へのインタビュー記事でした。「他者と出会えていますか」、「異なる考えと対話 トラブルを恐れ 萎縮する公共空間」と題されていました。全面否定するつもりはありませんが、そんなことをいくら議論しても、日本全体が民主的になることは決してない、と私は思います。

 なぜなら、対話が難しくなっているのはなぜか、ということが踏まえられていないと思うからです。「公共空間」は萎縮するするのではなく、萎縮させられているのだと思うのです。

 ことの本質をとらえて動かないと世の中がよくなることはないと思うのです。

 

 それは、アメリカを再び偉大に (Make America Great Again)を掲げ、公然と「法の支配」や「民主主義」を否定するようなトランプ氏が、なぜ大統領選に当選したのかをふり返るとわかると思います。

 第二次世界大戦後、世界最大の経済大国となったアメリカをけん引したのは、デトロイトの自動車産業、ピッツバーグの鉄鋼業、クリーブランドの重工業などに代表されるアメリカ北東部から中西部にかけての工業地帯だといわれています。昔は、高卒でも工場労働者として働けば、いわゆる中流階級の生活が可能だったのです。

 ところが、戦後、民主党や共和党の主流派が進めてきた、資本主義経済のグローバル化は、必然的に多くの企業が工場をメキシコや中国、東南アジア諸国に移転する流れを生み出しました。企業にとっては人件費を大幅に下げられるためです。その結果、かつて栄えた工場が閉鎖され、失業が増加し、地域経済の衰退することになりました。若者の流出、商店街の衰退、税収減、学校や公共サービスの悪化などをもたらしたのです。

 そして、かつてアメリカをけん引した製造業の心臓部が、ラストベルト (Rust Belt: 錆びた地帯)とよばれるようになったのです。

 だから、トランプ氏は、そうした状況をとらえて「中国が雇用を盗んだ」などという主張を繰り返し、アメリカの産業を空洞化させた自由貿易を批判して多くの共感を集めたのです。それはラストベルトの有権者にとって、「工場があった頃のアメリカを取り戻す」ということであったのだと思います。トランプ氏の訴えが功を奏し、かつて労働組合の強い民主党支持地域も、トランプ支持に変わっていったのだということです。

 トランプ支持の背景には、産業の空洞化をもたらしたグローバル化への反発、低賃金で働く移民に対する不満、都市エリートへの反感などが複雑にからまる「文化的・政治的疎外感」があったことを踏まえなければ、アメリカの分断を乗り越え、対話を取り戻すことはできないと思います。

 同じように、資本主義経済体制の国では、政権がどのような立場の人たちとつながっているのか、そして、どのような手段で政権を維持し、自らに都合の良い社会をつくろうとしているのか、を踏まえなければ民主主義を語ることはできないと思います。

 資本主義経済体制の国では、アメリカと同じように経済の矛盾が政治に影響し、人々の意識を左右していることを見逃してはならないと思うのです。

 資本主義経済体制の国の多くは、資本家(富裕層)に支持された政党が政権を担っていると思います。それは、資本家(富裕層)が、自らに都合の良い政策を求めて政治家に働きかけるからです。また、多くの資本家(富裕層)は、お金持ちであり、社会的権力を持っているのみならず、高い教育を受けているために教養もあり、いろいろな魅力を合わせ持っている人たちなので、影響力が大きいこともあると思います。

 ただ、そういう資本家(富裕層)が求める政策は、多数の国民の支持を得ることが難しいということが、どこの国でも共通の決定的な弱点なのです。資本の論理に基づいて動く資本家(富裕層)の求める政策は、多くの労働者の求める政策とは対立するのです。そこで、資本家(富裕層)や資本家(富裕層)の支持を得ている政治家は、さまざまな方法で、その弱点を乗り越えようとします。そこに政策に関する欺瞞や話し合いを受け付けないという分断の原因が潜んでいるのだと思います。

 たとえば、小泉内閣の時に、労働者派遣法の改正がなされ規制が緩和されました。だから、日本の雇用形態は大きく変化しました。非正規労働者が増えるきっかけになったのです。でも、労働者派遣法の改正に積極的だった当時の経済財政政策担当大臣、竹中平蔵氏は法案を成立させるために、あちこちで、”いろいろな働き方ができるのです”、”自由な働き方ができるのです。”、などと主張していたのです。でもそれが、資本の論理に基づいて多くの労働者を低賃金で働かせ、不安定な立場に追い込んで利益を上げようとする資本家(富裕層)の政策であることは隠し続けたのです。多くの労働者が貧困化し、格差が拡大することはわかっていました。また、若者が将来を見通せず、結婚をためらい、少子化に拍車がかかるだろうことも予測できたのです。それを追及されても言い逃れ、”いろいろな働き方ができるのです”  などとくり返したのです。

 だから、資本家(富裕層)や資本家(富裕層)と一体となっている政治家は、政権維持のために、政策の全体を語りません。都合の良いことしか語らないのです。

 また、格差が拡大し、労働者の貧困化が進んで、資本主義経済が行き詰まってくると、目を外に向けるために、排外主義をあおることも見逃せません。国によって、さまざまな要素がからんでくるので、複雑ではありますが、基本的に資本主義経済の国の共通の問題です。戦争もそうした経済の問題と無関係ではないのです。

 格差の拡大をとめられない政治では、欺瞞が繰り返され、分断がより深くなるだろうと思います。資本家(富裕層)と一体になっている高市首相は、しばしば「強い日本」という言葉を使いますが、それは、自らが抱える問題に向き合わず、負担を他国にしわ寄せして乗り越えようとする強さのような気がします。